“場”と香りの美学 KITOWA with Luxury Vol.2  aca(アカ) 「人生の分岐から生まれた、未知を開く食の空間」

“場”と香りの美学 KITOWA with Luxury Vol.2  aca(アカ)  「人生の分岐から生まれた、未知を開く食の空間」

香りは、空間に流れる時間の質をそっと整えるもの。KITOWAは、そんな時間の質にそっと寄り添う香りを大切にしてきました。たとえば、ひとつの香りが、空間の温度や記憶の深さを変えていくように。KITOWAは、目に見えない気配の美しさを大切にしながら、現代のライフスタイルに静かな豊かさを届けてきました。

本連載KITOWA with Luxury」では、美意識と感性によって選ばれると香りの関係を探ります。
Vol.2は、日本橋にあるスペイン料理  “aca”。
都市の奥に開かれた静かな食の空間と、香りが結ぶ余韻をお届けします。


Interviewee_
aca Chef  東鉄雄さん


日本橋、静けさが立ち上がる場所

日銀通りから視線を少し外すだけで、その場の空気が静かに落ち着く。
aca の前に立つと、街のリズムがふと変わり、
“ここから別の時間が始まる”という気配が漂いはじめる。

aca は、東シェフの繊細な感性と熟練の積み重ねが深まる、凛とした佇まいのレストランだ。

料理、空間、そしてほのかに漂う香り──
控えめなのに確かな美意識が、この場所の空気を形づくっている。

 

料理の原点 ― 人生の分岐が重なって生まれた感性

── シェフが料理の道に進んだ背景を伺えますか?

 「高校卒業後、カナダやアメリカで生活していました。帰国後は飲食店でアルバイトも経験しましたが、現場の厳しさを目の当たりにして、“料理人だけにはならない”と思っていたほどです(笑)。当時は、料理を仕事にする未来はまったく想像していませんでした。」

── そこから料理の世界へ入るとは、大きな転機ですね。

 「帰国後は25歳まで自動車の営業をしていましたが、“他人が作ったものを売る”ことに、次第に物足りなさを感じるようになって。そんな中、友人に料理をふるまい、心から喜んでもらえた経験がありました。
自分の手で作ったもので人を笑顔にできる── その瞬間、心の底から“ああ、自分はこっちだな”と気づいたんです。」

── 大切にしている価値観はありますか?

「小学校時代の先生に言われた、“常に挑戦しなさい”という言葉です。
同じ食材でも、同じ季節でも、毎回新しい表現を探す。
挑戦は料理人としてだけでなく、人としての姿勢だと思っています。」

── 40代で京都から東京へ進出されたのですよね?

「そうなんです。安定よりも新しい挑戦に賭けました。慣れ親しんだ京都でなく、新しい土地で新しいお客様に自分が今出せる最大のパフォーマンスを出したいという想いでした。」


スペイン料理との出会い ― “知っているのに知らない味”

── スペイン料理に惹かれた理由を教えてください。

「初めてスペイン料理を食べた時の衝撃が忘れられないんです。
 知っている素材なのに、食べたことのない味がする。 “これはなんだ?”と強く惹かれて、もっと深く知りたいと思いました。」

── 京都でのご経験もつながっていますか?

 「はい。京都のお客様は若手料理人の店でも通ってくれて応援し、育ててくれる文化があります。本当に厳しいんですけど、その厳しさが愛情でもあるんです。
僕もたくさん鍛えられました。 特に、「料理は真ん中に置いて直球勝負しろ」という言葉は今もずっと心に残っています。」

── その言葉が、今の料理の軸につながっているのですね。

 「そうですね。奇をてらう“驚かせる料理”よりも、口に入れた瞬間に“ああ美味しい”と幸福度が上がる料理。そして、“また食べたい”と思ってもらえること。
結局、美味しさそのものが料理の本質なんですよね。 スペイン料理に出会った時の衝撃と、京都で育ててもらった経験が、今のスタイルを形づくったと思います。」



空間という、もうひとつの料理

── acaでは料理だけでなく、空間全体で季節を表現されているのが印象的だなと感じます。

「日本料理では、掛軸や花で季節を感じさせますよね。洋食でも同じことができるはずだと考えました。アートや椅子、器など、空間の要素を少し変えるだけで、店の表情は大きく変わります。
常連のお客様が『今日は何が変わったんだろう』と自然に会話を始めてくれる。そうやって空間そのものが体験をつくり、料理をそっと支えてくれるんです。」



香り ― 料理人とお客様の“手”を守る静かな存在

── KITOWAのハンドソープは長くお使いいただいていますが、実際の使い心地はいかがでしょうか?

「とても相性がいいですね。まず、香りが控えめで料理の邪魔をしない。
私は手で食材の状態を確かめますし、スペイン料理ではお客様が手で召し上がることもあります。だから、手に香りが強く残っていると
料理が本来まとっている香りが微妙に変わってしまうことがあるんです。」

── 香りだけでなく、使用後の手の感覚についてはいかがですか?

「はい。乾燥も防ぎ、しっとりするのに手の感覚を奪わない。
いろいろ試した中で、総合的に一番しっくりくるんです。
“いるけれど出しゃばらない”距離感が、この店の空気とよく合っているんですよ。」


これからのaca ― 静かに深まる挑戦

── これからの aca をどのように描いていますか?

「40代は東京で挑戦すると決めて日本橋に来ました。
50代をどう生きるかは、今まさに考えているところです。
小さく深めるのか、凝縮した世界観にするのか、あるいは海外での挑戦か……
いくつもの扉を静かに思い描いています。」

── どんな道を選ばれるとしても、シェフにとって変わらないものは何でしょうか。

 「料理は、誰かを喜ばせるために作るもの。
その本質さえ揺るがなければ、場所やかたちは関係ないと思っています。」


日本橋の夜は、静かに心へと染み渡る

日銀通りの光が遠く揺れるころ、
aca で過ごした時間の余韻は、
料理、光、器、そしてほのかな香りとともに
静かに心の奥へ染み渡っていく。

主役は料理。 空間がその物語を支え、
香りが最後に体験を静かに整える。

aca は、そんな“静かで強い体験”を差し出す場所だ。

 

aca

aca(アカ)

東京都中央区日本橋室町2丁目1−1 三井2号館1F
完全予約制※2部制
営業時間:平日 17:00〜 / 20:30〜 
      土曜日 12:00~/ 17:00~

Instagram:  @aca_kyoto_tokyo

 Photo_野呂知功 (TRIVAL), Text & Edit_KITOWA